勝浦へ、波乗りにいってきた。

勝浦はぼくが一番好きな海だ。20代の頃、いずれは勝浦に住むというのがぼくの夢だった。だがその夢もいつの間にか消えた。仕事のこともあるし、老いた母のこともある。すぐに実家にいける場所に住む必要があった。
実家は千葉市の南部、千葉港から少し内陸に入ったところにある。ぼくのアパートもその辺だ。だから勝浦の海にいくには、ちょうど房総半島を横断する形になる。
1時間半の道のり。これが意外にも気に入っている。
フロントガラスに映る風景に、季節を感じられるからだ。
そして今日、春を感じた。
明らかに、春がきた、と確信した。
先週は、春がくる、と感じた。まだ完全にきてはいないが、もうすぐくる、と。
そして1週間経って、春がきた。
おりしも今日、東京でソメイヨシノが満開した、と運転中のラジオが報じていた。その言葉どおり、房総の桜も見事な花を見せていた。県花でもある菜の花も、真っ黄色なじゅうたんと化している。
だがそんな花々の開花より、ぼくの心を春の訪れでいっぱいにしたのは、田んぼだった。田んぼに、水が張られていたのだ。
毎年その光景を見ると、ぼくは、ああ春がきたんだ、としみじみ感じる。
今年も春がきた。
ところで、今日の波乗りは……
部原ポイントで、午後の2時~5時まで。サイズはコシ~ハラ。たまにセットで形いい波がくるものの、全体的にはやや物足りなかった。
それと皮肉なことに、往路の道中で、春がきたと確信したこの日の海は、ものすごく冷たかった。先週きたときはもうブーツなどはかずにできたのに、今日はブーツはおろか、グローブも必要なほどだった。ローカルたちも、今日はマジで冷たい、と泣き顔を見せていた。
海から上がり、車の後部トランクでウエットスーツを脱ぐ。
そのすぐ近くで、ローカルたちが談笑していた。しばらくしてかれらは、じゃあまた明日、と手を振り、ウエットスーツのまま車に乗りこみ、帰路についた。
その光景を、ちょっぴりうらやましく思った。本当なら、ぼくも……、とつい考えてしまう。
だけど、それは仕方ないことだ。
自分が置かれた状況を悲嘆していては何もはじまらない。その状況の中で、楽しむ術を見つければいい。
ぼくは家路についた。
夕暮れに染まる房総丘陵の風景に、春を感じながら。
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明らかに、春がきた、と確信した。
先週は、春がくる、と感じた。まだ完全にきてはいないが、もうすぐくる、と。
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だがそんな花々の開花より、ぼくの心を春の訪れでいっぱいにしたのは、田んぼだった。田んぼに、水が張られていたのだ。
毎年その光景を見ると、ぼくは、ああ春がきたんだ、としみじみ感じる。
今年も春がきた。
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部原ポイントで、午後の2時~5時まで。サイズはコシ~ハラ。たまにセットで形いい波がくるものの、全体的にはやや物足りなかった。
それと皮肉なことに、往路の道中で、春がきたと確信したこの日の海は、ものすごく冷たかった。先週きたときはもうブーツなどはかずにできたのに、今日はブーツはおろか、グローブも必要なほどだった。ローカルたちも、今日はマジで冷たい、と泣き顔を見せていた。
海から上がり、車の後部トランクでウエットスーツを脱ぐ。
そのすぐ近くで、ローカルたちが談笑していた。しばらくしてかれらは、じゃあまた明日、と手を振り、ウエットスーツのまま車に乗りこみ、帰路についた。
その光景を、ちょっぴりうらやましく思った。本当なら、ぼくも……、とつい考えてしまう。
だけど、それは仕方ないことだ。
自分が置かれた状況を悲嘆していては何もはじまらない。その状況の中で、楽しむ術を見つければいい。
ぼくは家路についた。
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