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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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仕事の後の波乗り~海にきたからこそ手にできるもの

昨日(4/19木)、仕事が終わってから、波乗りをしに勝浦に出かけた。

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1人欠勤者が出たため仕事がめちゃくちゃきつく、終業の頃は身体がへばっていた。本来なら波乗りどころじゃなく、むしろサウナにでもいって疲労を取った方がいいくらいの感じだった。午後の2時半、これから車を飛ばして外房まで出向き、波と格闘するなんて、正気の沙汰ではなかった。

迷ったあげく、いくことにした。いくかいかないか迷ったときに投げる心の中のコインは、いつだって表しか出ない。ぼくのコインに裏はない。

車で1時間半、勝浦の「部原」についた。時刻は4時になっていた。急いでウェットスーツに着替え、6時すぎまで波乗りした。

波はまあまあよかった。その割に人があまりいなくて、中級レベルのぼくでもけっこうな数の波に乗ることができた。そのうちの何本かは自分でも納得できるライディングで、長いブランクの穴を埋めるきっかけになりそうな、そんな予感がした。

きてよかった、と心から思った。

仕事というのは「日常」だから、避けられないしがらみなどに押しつぶされて、どうしても心がぐちゃぐちゃに乱れる。だから人間には「非日常」が必要なのだと思う。そこでバランスを取り、どうにかこうにか生きていく。

だからぼくは忙しい中でも、週に一度は海にくる(ホントはもっときたいのだが)。今週は2度ある休日がどちらも予定で埋まっていたので、こうして仕事が終わってから車を飛ばして海にきたのだ。仕事が早朝にはじまって午後の早い時間で終わるからこそ、できる芸当なのだが。

だけど、ジンクスではないが、ぼくはたいてい仕事が終わってからの波乗りで何かをつかむようだ。休日にゆとりをもって波乗りするときよりも、仕事で疲れた身体でする波乗りの方に、大きな手ごたえを感じるのだ。この日もひさしぶりにフローター(波乗りの技の一つ)が決まったし、何となくブランク前の感覚を取り戻せた気がした。



思えば、生まれてはじめてテイクオフして横にすべれたのも、休日ではなく、普通の日だった。仕事が終わった後ではなく、学校が終わってからだったが。

まだぼくが高校生の頃の話だ。学校が半ドンだったある11月の日、ぼくは学ランのまま外房線の列車で海に直行した。当時ぼくは太東の海沿いにあった某サーフシップにウェットスーツとサーフボードを置かせてもらっていて、自宅からは手ぶらで海に向かっていたのだ。

3時頃に太東駅につき、ショップまで走り(太東駅は海から2キロ以上離れている)、板を抱えてポイントに向かった。その日の太東の波のサイズはカタ(肩くらいの高さ)で、まだ波乗りをはじめて半年くらいのぼくにはやや大きかった。だが今日こそ乗ってやる、と気合を入れて沖に向かった。その頃は一応サーフボードの上に立つことはできたが、それは単に「立てる」というだけだった。波乗りにおいて「波に乗る」というのは、サーフボードの上に立ち、なおかつその板で波を横にすべることを意味するのだ。

夏休みの間、くる日もくる日も練習し、それでも横にすべれずにいたぼくは、ああ自分には才能がないんだ、と思いかけていた。波に乗れない波乗りほどつまらないスポーツはなく、夏休みが終わって2学期の半ばに差しかかる頃には、海にいくのが憂鬱になっていた。だからその日も本当は海になんかきたくなかった。わざわざ列車に乗って海にまできて、それでまたつまらない思いをするくらいなら、仲間と一緒にわいわいすごす方がどれだけ楽しいか。その日も仲間から麻雀に誘われていた。楽しそうだな、と心がぐらっと傾いたものだった。

だけど海にきた。そして……。

その瞬間がきたのだ。そう、波に乗ったのだ。テイクオフからボトムターン、ぼくとぼくを乗せたサーフボードが、すうっと風を切って真横にすべった。

うおおおおっ、と心の中で叫んだ。全身が熱くなった。やった、やったぞ、と、ぼくは人目も気にせず右手のこぶしを何度も顔の前でかためた。

あのとき誘惑に負けて麻雀をやっていたら、その瞬間はおとずれなかった。もしかしたら麻雀に勝っていくらかの金を手にしていたかもしれないが、そんなものは、生まれてはじめて「横にすべった」経験に比べたら鼻くそみたいなものだ。

あの日、あの瞬間、全身で感じたあの熱さは、数十年経った今もはっきりとおぼえている。ぼくの波乗り人生の中で、最も輝いた瞬間だった。

そして、それは海に向かったからこそ手にできた瞬間なのだ。

だから……

いつだってぼくは、いくかいかないかで迷ったら、いくことに決めている。どんなに疲れていても。べつの誘惑が目の前にあっても。



来週も、ぼくには2日間の休日がある。2日間とも予定で埋まっている。波乗り以外の予定だ。つまり、波乗りにいくなら、また仕事を終えてから、ということになる。

正直きつい。仕事は肉体労働で、ただでさえ動きっぱなしなのに加えて、会社の経営悪化にともなう1日あたりの人員削減で、1人にかかる負担が増大している。さらにうちの職場は無断欠勤常習者が3人もいて、そのうちの1人でも穴を開けた日には、冗談ではなく、草サッカー3試合分くらいの運動量になるのだ。

その後に、遠路はるばる波乗りしにいくのは、二日酔いの日に、都心まで出かけて大宴会に参加するようなものだ。

だけどぼくはいく。

どんなに疲れていても。どんな誘惑が目の前にあっても。

そこで手にするだろうものの大きさを、知っているから。



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