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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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ゴールデンラッキービートルの伝説 水沢秋生

世の中がくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。

こんにちは。ひさかたぶりの「道下森の本棚」の時間がやってきました。

さて、ひさかたぶりになってしまった言い訳ははぶき、さっそく本題にいってみよう。今日、紹介する本は、これ。





水沢秋生著「ゴールデンラッキービートルの伝説」 だ。

まずは内容から。

フツーの小学六年生だった俺。“未来に夢を抱く”ことなんて諦めていた。あいつらと出会うまでは―ジュンペイとヨータの秘密基地には、「ゴールデンラッキービートルの伝説」と名付けた廃車のワーゲンがある。ある日ヨータは、ジュンペイがウサギ殺しの犯人と疑うクラスメートの女子・ヒナが、そのビートルから何かを持ち出すのを目撃する。河原に向かったヒナが手にしていたのは、挙銃だった…。少年少女の一瞬の友情を描く、希望にみちた青春小説。第7回新潮エンターテインメント大賞受賞作。

「BOOK」データベースより


何となしに手に取った本だ。

表紙の絵の空が真っ黄色で、その空をビートル(フォルクスワーゲン)が飛んでて……

それが妙に心に引っかかり、何となく手に取った。


「ある現在」と称された物語の冒頭は、ぼんやりと形をなしていない。語りべは、老いた小学校の先生であることが何となくわかる。その男性教師が、新聞にのった元教え子を見つけ、当時を懐かしむ。

そこから先、現在と過去をいききしながら物語は進んでいく。語りべが、めまぐるしくかわりながら。

その語りべは、みんな同じ6年3組の児童だった男女なのだが、「現在」を語る多くの男女はこの物語においては脇役であり、物語のスパイスにすぎない。物語は、あくまで小学校時代の出来事からはじまっていき、その中心にあるのは、3人の児童、ジュンペイとヨータとヒナだ。だから過去を語る語りべは、この3人だけとなる。そして、物語全体のまとめ役として、当時の担任の要先生、物語の冒頭で「現在」を語っていた老教師(むろん、物語の中心である「過去」では、まだ若い)がいる。この4人で物語は成り立っている。

ジュンペイとヨータ、2人の少年の友情に、ある事情から転校をくり返す少女ヒナが加わる。その中心にあるのは、ゴールデンラッキービートルという秘密基地だ。

おお、秘密基地!

ぼくも小学生のとき、友達とつくった。秘密基地。この秘密という部分が、友情をはぐくむのだ。おれたちだけがこの基地に入ることができる、ほかのやつは入れさせない、おれたちだけの秘密……

仲間はずれとは微妙にちがくて、何というか、単なる遊び仲間ではない、特別な友情の表現方法というか……

ううん、今こうして活字にしてみると仲間はずれにつながる感じがするけど、あの頃はそういう感じじゃなくて、はじめてできた本当の友達の証しというか……

まあいいや。そういうこむずかしいことじゃなく、単純にわくわくするんだ。そう、秘密基地にはわくわく感があった。

この物語の3人も、その秘密基地で友情をはぐくんでいく。3人だけが共有する秘密が、かれらをかけがえのない仲間にかえていくのだ。その感じが、読んでいてびんびん伝わってくる。

やがて3人に別れのときがやってくる。

ヒナがまた転校してしまうのだ。



子どもにとって、別れはつきものだ。親の都合、学区の問題、そして時間、さまざまな要因が、子どもたちを散り散りにしてしまう。

ぼくも小学5年生のときに転校したから、別れがつきものであることは痛いほどにわかる。大人の都合で、最高に仲がよかった友達と離れ離れになってしまう、理不尽な別れ。ずっとずっと友達でいようと、別れ際に約束したものだった。

けれどもいずれは、その友達とはもう2度と自分の人生でまじわることがないのだと気づく。そう気づいたときには、自分はもはやべつの世界に身をおいている。そして、そこにはべつの仲間がいるのだ。



ヒナの転校につづき、ジュンペイとヨータにも別れのときがくる。中学のときヨータが転校したのだ。しばらくは手紙のやり取りがあったようだが、その後いろいろあって、連絡が取れなくなった。

3人は散り散りになった。

そして時間が流れ、かれらは大人になる。記憶の中に小学6年生のときの仲間の姿はあるが、そこに実態はない。記憶だけだ。

よくある話だ。

だけどこの物語にはつづきがある。

そこで物語が、冒頭の場面に戻る。

老教師となった、要先生が新聞にのった元教え子を見つけ、当時を懐かしむ場面に。

そして……



ラストシーンの奇跡は、胸がつまってしかたなかった。涙もこぼれた。ぼくは仕事に出かける前のひとときに読んだのだが、しばらく物語の世界から離れられず、遅刻しそうになったくらいだ。

マジでよかった。

これはおすすめです。みなさん、ぜひ手に取ってください。





今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。

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