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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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すべての出来事は明日に向かっている ~2012年を振り返って

店長のお見舞いにいってきた。

いつも厨房からぼくを叱咤激励していた大きな存在が、病院のベッドで驚くほどに小さくなっていた。はじめはちょっぴりショックだったけど、話すうちに、気持ちまで病みきっているわけではないのだとわかって安心した。目には力があったし、弱々しい声ながらも、言葉の一つ一つに希望があったから。

病名は、ぼくを安堵させるものではなかった。それでも店長は未来に向けての話をぼくにしてきた。店はもちろんつづけるといった。

覚悟は決めているようだった。

長いこと家でプー太郎をしていた息子さんを後継ぎに考えているようだ。今、息子さんが毎日おでん汁に火入れ(おでん汁は営業がない日も沸騰させなければいけない)をしたり、ぬか床を管理したりして、店を守っているらしい。そのほかのこと、仕入先や店の管理会社への支払いなどは、お嬢さんがしているという。

「とにかくまずはおれが退院してからだな」

店長はかすれた声でいった。

「仕事を教えるにしても、おれが横にいなきゃだめだからな。息子にも、おまえにもな」

ああ、とぼくは泣きたくなる思いで店長の言葉を受けとめた。新たな体制で再開する店に、しっかりとぼくの居場所はあった。

「退院しても、おれはもう毎日は店に立てない。だからこれからどういうふうにやっていくか、みんなで話し合わないとな」
「はい……」
「店が再開するときまで、ちゃんと準備しといてくれよ」

病院を辞し、高速を飛ばしながら、ぼんやりとこれからのことを考えた。ぼくははこれからどうなっていくんだろう。果たしてぼくは、自分のいきたい港に向かっているのか……。

今年1年、いろんなことがあった。本当に、大きな1年だった。

つらくてつらくて、どうしようもない時期もあった。正直いえば、その気持ちは今もまだつづいている。自分はどうして幸せになれないのだろうと、神や運命を呪いたい、そんなふうにも思っている。

だけど、ぼくは思う。

そのつらい日々が、その哀しみが、いつか人としてのやさしさにかわるんだ、と。泣きたくなるような、あるいは死にたくなるような、そんな経験が、やさしさの泉になるんだ、と。

ぼくはおでん屋を開く。そう決意したのも、今年の出来事の一つだ。大きな大きな、もしかしたら今までの人生で一番大きな出来事だ。

そして、いつの日か自分の店を持ったとき、ぼくはすべてのお客さんにやさしさを与えたいと思っている。傷ついた人や、つらい目に遭った人に、大丈夫だよ、といってあげられる、そんな人間でありたい、そんな店をぼくはやりたい、そう思っている。そのために、ぼくは店をやるんだ、と。

だから、すべてのことは無駄ではないのだ。

今年1年の、あるいは今までの人生の、すべての出来事が、明日に向かっているのだ。

そんなことを思いながら、ぼくの2012年は終わっていく。

大丈夫だよ……

いつだって人生は、ぼくたちの味方だ……

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