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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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船に乗れ 藤谷治

今週の「道下森の本棚」は、

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だ。

画像に1巻がないのは、持っていないからだ。

この本の全巻が書店に平積みされていた昨年末、ぼくは旅から帰ってきたばかりで定職もなく、また金もなかった。だから、おっ、おもしろそうだな、と思った本も買うことができず、もっぱら図書館で借りて読んでいた。

……で、この「船に乗れ」も、図書館で借りた。
借りた、といっても、書店に平積みされるほどの本だから予約数も多く、すぐに手には入らなかった。予約して、図書館からの連絡を待つのだ。予約順位が100位を軽く超えていたので、市内の図書館すべての所蔵数を考えても、手元に届くのは半年以上先になるが、それでもかまわないと思った。

そのとき、全巻すべて予約しようかとも思ったが、図書館の予約というのは厄介なもので、順番どおり1巻から順に手元に届くかわからない。だからとりあえず1巻だけ予約し、読んでみて面白かったら、2巻と3巻は金を出して買おうと決めた。つまらなかったら2巻も3巻も必要ない。

……で、予約して、日が経つにつれて、その本のことは忘れた。

図書館から連絡がきたのは、予約してから10カ月後、10月の半ばのことだった。

正直、その頃になると、読みてえ! って熱はかなり冷めていた。
だけどせっかくなので、読みはじめた。(といっても、そのとき読んでいたべつの本を読み終えてからだ)

……!

寝そべって読みはじめたぼくは、ダイコン役者並みの動きで、ガバッと身体を起こした。

こいつはおもしろくなるんじゃねえか…… いや、モノホン(本物の意)かもしれねえぞ……

本当におもしろい小説っていうのは、だいたい5冊に1冊くらいの確率(もっと低いか?)だから、ひさびさのヒットの予感に、ぼくの身体は熱くたぎった。

20ページほど読んだところで、期待は確信にかわった。

こいつは早いところ2巻と3巻の手配をしておかねえとなるまい……

ぼくはすぐさまAmazonで、一番安い中古本(すでに仕事をはじめていたとはいえ、まだふところは寂しかった)を注文した。

2巻が届くくらいのタイミングで読み終えようと、ペース配分しながら読んだ。だが、何しろおもしろいから、あとちょっと、あとちょっと、といった感じに読み進めてしまい、2巻が届く前に、1巻を読み終えてしまった。

しまった。ケチらないで、書店で新品の本を買えばよかった……

ぼくは2巻が届くのを、首長竜になって待った。なかなか届かずにいらいらしたが、一方で、本に対してこんな思いをしたのはひさしぶりだったから、うれしくもあった。

そんで、2巻がきた。それにつづく3巻もほぼ同時に届いていたので、あとはもう一気に読んだ。



不思議な小説だった。

不思議なリアリティーがあった、というべきか。

現在の自分が過去を語るという感じに物語が進んでいくのだが、ときどき過去から現代に戻り、進行中の話のその後を、小出しに語る。それが絶妙に読者の心を揺さぶるのだ。

これは実話なのだろうか。作者の高校時代の物語なのだろうか。

そうだとしたら、すごい。ミリ単位で再現された記憶力もすごいが、昔話特有の「美化」がされていないのだ。どちらかといえば、恥の部分が大半を占めている。それでいて、ひりひりと心にしみる若き日の追憶となっている。これは作者にとって、相当の覚悟が必要だったと思う。

あるいは、実話でないとしたら。

それはそれですごい。実話と錯覚させる表現力は、もうただ事ではない。

実際は、中を取って「実話に基づいた創作」なのだろう。

いずれにしろ、おもしろかった。

物語自体のおもしろさもさることながら、圧巻はラストだ。タイトルである「船に乗れ」という言葉が出てくるシーンがあるのだが、そのシーンで、身体がぶるっと震えた。もちろん、感動で、だ。そしてそのシーンが、この物語に深い意味を与えている。

おすすめだ。

物語の背景である音楽の知識などまったく必要ない。
知らない専門用語や曲の名前なども数多く出てくるが、まったく問題なかった。

ぜひ、読んでみてほしい。

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