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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

旅について 遊びについて 夢について 人生観について 本について 愛用品について ありったけの思いを語ります

 

傷だらけの店長~それでもやらねばならない~  伊達雅彦

本屋という空間がある。

そこに入りこむと、不思議な安心感をおぼえる。

あの感じは何だろう。自分を追いたてるすべてのものから逃れられたような感覚。誰にも、何にも邪魔されず、静かに自分自身と対話できる場所。自分の部屋ともちがう、故郷の懐かしい風景ともちがう、だけどそれと同じくらいの、いや、あるいはそれ以上の、何ともいえない心地よさを感じる空間。

そう、本屋にいけば、本当の自分に出逢えるのだ。おおげさではなく、ぼくはそう感じる。

旅行関連書、スポーツ関連書、芸術、料理、酒、趣味の本、自己啓発書、ビジネス経済、文芸書、文庫本、雑誌コーナー……。ゆっくりと歩き、ときに立ちどまって、平積みされた本の表紙の感じや、棚に並べられた本のタイトルの文字を見て、気になった本を手に取り、パラパラと覗く。そんな小さな旅をつづけていくうちに、自分の内側にひそむ、自分でも気づかなかった興味や好奇心がふつふつとわき上がるのだ。ときにそれはものすごいモチベーションとなって、将来さえ決定づける。

そして、そして、とうとう、これだ、と思う本と出逢う。

全身が熱くなる。ぼくはその本をそっと手にし、レジへと向かう。お金をしはらい、その本を手に本屋を出ると、それだけでもう自分の人生が何倍にも広がった気になっている。この本が自分に与えてくれるだろうさまざまな刺激の、その気分だけ先取りしているのだ。

本が、たった一冊のちっぽけな本が、ぼくの最高の友達になった瞬間だ。

不思議なことに、そうした出逢いがひんぱんに起こるのは、特定の本屋と決まっている。いつもの本屋。そんな本屋がぼくにはある。そこ以外の本屋では、不思議とそういう出逢いがないのだ。

それをぼくは単純に相性の問題だと思っていた。

まさか、その裏で、本屋の従業員がものすごい労力をかけて演出してくれているなんて、思ってもみなかった……



世の中がどんなにくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。

こんにちは。今週も「道下森の本棚」の時間がやってきました。

さて今日は、こんな本を紹介する。

傷だらけの店長 ~それでもやらねばならない~

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伊達雅彦著/「傷だらけの店長~それでもやらねばならない~」だ。

この本は、ある地域で人気を誇っていた中堅書店の店長である著者が、出版業界誌「新文化」に不定期で連載していたものだ。それに若干の手直しと加筆をくわえたものだと、著者はあとがきで語っている。

つまりこの本は、書店が抱える問題をあますところなく書きつづった、リアルな手記なのだ。

はじめの数章は、ほのぼのと読めた。ほのぼのと読みつつ、多少考えさせられる、そんな感じだった。

たとえば、<店長>が万引き犯を追いかける話。病的なまでに万引きを許さない店長の行動に、ついふき出してしまった。

また、アルバイトを募集する話では、求人誌の営業の人との一幕が何かリアルでよかった。<店長>がけっこう熱い人で、すぐに喧嘩みたくなるのも、ちょっとぼくと似ていて共感が持てた。

あるいは、あつかいづらいベテランのバイト連中にクビをいいわたすシーン。その臨場感や<店長>の心中がビンビン伝わってきて、つい息をのんだ。

この本おもしれえ~

そんな感じで読んでいた。

だが本の中盤をすぎ、同じ地域に「超」大型書店が出店してきたあたりから、物語は急展開していった。同時にぼくの気持ちも、やや引きしまった。おいおい、軽い感じには読めねえぞ、こいつは、と居住まいを正した。

大型店が開店すると、<店長>の店から客が消えていき、赤字がつづく。

<店長>以下、書店スタッフ全員の努力でどうにか対抗する。敵は「超」大型店、こっちは中堅の店、どうあがいても負けるとわかってはいるのに、それでもかぎられた中で、最善の工夫をする。できることの、すべてをやる。そうやって、わずかではあるけれどもやってくる客に、最高の「本」を提供する。

すげえ……

読みながら、ぼくは胸を打たれていた。

そうだったのか……

本屋の従業員たちの、こうした給料を度外視した努力や情熱が、ぼくら本好きと、ぼくらと出逢うべき「友達」である本との、かけ橋となっていたのだ。

知らなかった……

本屋なんてものは、単に人気のある本を仕入れて、それを片っぱしから棚に並べているだけだと思っていた。

しかし、そうではなかったのだ。

店長以下スタッフの一人ひとりが、ぼくらが想像もできないくらいの労力をかけて、自分たちの店をつくりあげているのだ。この「本」をすすめたい、この「本」だけは読んでほしい、従業員のそうした思いの蓄積の結果、客であるぼくらにとって、魅力的な本屋ができあがる。

冒頭で書いた、「友達」との出逢いがひんぱんに起こるのは、その背景に、スタッフらの想像を絶する努力があったのだ。本に対する、並々ならぬ思いがあったのだ。

著者である<店長>は、大学出でありながら、同年代の友人らと比べて年収が極端に低い。それでも本屋をつづけているのは、ほかでもない本に対する情熱だ。本が好きで、同じように本が好きな人たちにすばらしい本を出逢わせたい、その一心で、本屋を、店長をつづけている。もっと楽な仕事があるのに、もっと収入のいい仕事があるのに、もっと器用な生き方があるのに、それでも<店長>は、本に対する情熱ゆえに「本屋」でありつづける。日々、葛藤しながら。

ぼくと同じではないか……

ぼくは今、小説を書いて暮らしている。暮らしている、といっても、小説で食っているわけではない。アルバイトをして生活しながら、自分が書きたいものを書いているのだ。

正直、もういいか、とも思う。小説なんて書かなければ、もっと楽に生きられるのだ。自慢するつもりはないが、ぼくはどんな仕事をしても、かなりのレベルにまでいく自信がある。業種、職種に関係なくだ。これがかんちがいでないことは、今までぼくとともに仕事をしてきた人が、証明してくれるはずだ。

だのに、小説を書いている。早朝からの、食品の仕分けのアルバイトをしながら。時給○○円の収入で。まわりからは、「負け組」だと思われながら。昔からの友人からも、馬鹿だ馬鹿だとののしられながら。

情熱のせいだ。1人でも多くの人に、ぼくの書いた「物語」を読んでほしい。読んで、何かを感じてほしい。その一心で、やっているのだ。情熱なんてやっかいなもの背負いこまなければ楽に生きられた。だけど情熱を持ってしまった以上、やるしかない。とことんまで。

この店長もそうなのだろう。友人から、馬鹿呼ばわりされるシーンが何度も出てくる。それでも店長は意に介さない。本に対する情熱があるから。

やがて店がつぶれ、かれは会社をやめる。本屋の激務から解放され、おだやかな日々がはじまる。そんな日々をすごしながら、かれは葛藤する。自分は、この先どうありたいのか。本屋をやめるのか、それとも、やっぱりまた本屋に戻るのか。かれは自覚している。どんなにきつくても、自分が一番生き生きとしていられるのは本屋であると。しかし……



この「傷だらけの店長」、本が好きな人なら絶対に読むべき本だ。

そしてそうじゃない人も、読んで損はない。自分の仕事について、人生について、考えさせられる本だ。

ぜひ、読んでほしい。

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