ビッグウェンズデイ デニス・アーパーク ジョン・ミリアス 片岡義男訳
世の中がどんなにくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。
こんにちは。3週間ぶりに「道下森の本棚」が帰ってきましたよ~
さてさて、今日ご紹介すする本はこれ。

ビックウェンズデイ だ。
'60年代のサーフィン映画のノベライズだね。
……といっても、小説としても、じゅうぶんに楽しめる。むしろ、映画では描かれなかった主人公たちの背景なども書かれてい、より奥深く読むことができる。
では、恒例の裏表紙の概要をどうぞ。
何十年かに一度、カリフォルニアの海岸に押し寄せるという伝説の大波。それは決まって水曜日だと言い伝えられている。このビッグウェンズデイに乗ることが、サーファーたちの生涯の夢なのだ。
サーフィンで結ばれた若者たち―マット、リロイ、ジャック。波乗りと女の子と馬鹿騒ぎパーティー。それがかれらの青春だった。だが待ち望んだビッグウェンズデイが訪れないまま、3人は散り散りにならねばならなかった。
仲間の1人はベトナムで死に、生き残った者たちにも、あの波乗りの日々は遠く去ろうとしていた頃、ついにその大波がやってきた!
サーフィンに夢をかけた若者たちを通して鮮やかに描く60年代の青春。
……で、下の動画が、映画「ビッグウェンズデイ」の宣伝。
この映画を観たのは、高校2年のときだ。当時ぼくは波乗りをやっていた。毎週日曜日、ときには学校をさぼって、九十九里に住む友人の家を拠点にして、波乗りに明け暮れていた。
長い休みのときは、何日間もそいつの家に泊まり、朝と夕方は波乗り、日中は昼寝かパチンコ、夜は酒飲んだり遅くまで仲間と語ったりという、まさにこのビッグウェンズデイの若者たちと同じ青春(?)の日々を送った。
※その仲間の家はものすごい放任主義で、仲間のたまり場になっていた。
そのとき仲間の1人が「ビッグウェンズデイ」のビデオを持ってきたのだ。それをみんなで食い入るように観た。
すげえ、これが本物のサーフィンなんだなあ……
映画を観て感激したぼくらは、夜遅くまで夢を語り合った。
「おい、高校出たら、ぜってえ(絶対)外国いんべよ(いこうぜ)なあ」
「おう、いんべよお(いこうぜ)」
「そんでおお(それでよ)、プロのサーファーになんべよ(なろうぜ)」
「どこがいい? やっぱカリフォルニアか?」
「ハワイだべ、ハワイ」
「いや、オーストラリアだべ。あそこはよお、ワーキングホリデーってビザがあんだよ」
「何だ、そりゃ?」
「アルバイトしながらよ、1年間まで滞在できんだつけ(できるんだよ)」
「マジで? おう、オーストラリアいんべ(いこう)」
「おういんべよ(いこうぜ)」
それはもう、マジでぼくらの合言葉になった。外国。オーストラリア。その言葉の持つ響きは、かすんで見えなかった将来に、カンテラのように光をともした。
高校3年になり、その夏がすぎると、仲間たちはみんな就職を決めはじめた。中には専門学校にいく者もいたが、どちらにせよ、その将来像に「外国行き」の匂いはいっさいなかった。
「夢だけじゃ暮らせねえべよ。俺らもう18だぞ」
やがて卒業を迎え、みんなそれぞれの道を歩きはじめた。
ぼくはアルバイトをしながら、毎日波乗りに明け暮れた。夢を決行するためだった。金をためてオーストラリアにいくと決めていた。
そんなぼくを、仲間はとがめた。おまえはガキだ。何もわかってない……。
いつしかその言葉は、おまえ~から、あいつ~にかわっていた。あいつはガキだ……、つまり遠くからその声が聞こえてくるようになったのだ。そう疎遠になっていったのである。
それでもぼくはオーストラリアにいこうと決めていた。バイトをいくつもかけ持ちし、出費もおさえた。
……で、22歳の冬にオーストラリアにわたった。そこで1年間、自分なりの旅をした……
みんなとの約束を果たしのだ。
あの旅は、今でもぼくの一番の財産だ。そしてそれはすべて、仲間と一緒に観た「ビッグウェンズデイ」の映画からはじまった。
「ビッグウェンズデイ」の小説版を手にしたのは、ずいぶん後になってからだ。とある旅の途中に、偶然、古本屋で見つけた。1も2もなく、ぼくはその本を買った。
本も映画も、ぼくはもう何度も読み、観ている。
本を読むたび、あるいは映画を観るたび、あの日、九十九里の仲間の家で夜通し語った日が、鮮明によみがえってくる。
みんな散り散りになった。それでもぼくにとって、今でもたいせつな仲間だ。
ビッグウェンズデイの主人公たちも、大人になってみんな散り散りになる。だがかれらは、物語のラスト、ビッグウェンズデイにのぞむときに再会を果たす。かれらをつないでいたのは、やっぱり海だったのだ。
今でもぼくは、たまの休みの日に、愛車に板を積んで波乗りに出かけている。
そのときいつも、昔の仲間に逢うんじゃないかと考えてしまうのだ。海につき、沖に出て、その姿がないと確認し、ほっとしたのかがっかりしたのか、自分でも判別できない思いを抱く。
いつか逢えるだろうか。
ぼくらのビッグウェンズデイはおとずれるだろうか。
わからない。わからないけど、ぼくは波乗りだけはつづけていく。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。
刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング
オリジナルワンな生き方 ヒュー・マクラウド
スローカーブを、もう一球 山際淳司
リッツカールトンで育まれたホスピタリティノート 高野登
船に乗れ 藤谷治
ルリユールおじさん いせひでこ
超訳ニーチェの言葉
白銀ジャック 東野圭吾
神さまはハーレーに乗って ジョン・ブレイディ
気まぐれロボット 星新一
BRUTUS 2011 2/1号
男の作法
天国はまだ遠く 瀬尾まいこ
最後の授業 アルフォンス・ドーテ
モーラとわたし おーなり由子
老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ
傷だらけの店長~それでもやらねばならない~ 伊達雅彦
Sports Graphic Number「スポーツグラフィック ナンバー」 3/24 ルーキー秘話
奇跡は路上に落ちている 軌保博光
小屋番三六五日
O型自分の説明書 Jamais Jamais
一瞬の風になれ 佐藤多佳子
バカでも年収1000万円 伊藤喜之
ユニット 佐々木譲
桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ
自分でつくる うまい海軍めし 海軍めし愛好会
スタインベック短編集
金持ち父さん 貧乏父さん ロバート・キヨサキ
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こんにちは。3週間ぶりに「道下森の本棚」が帰ってきましたよ~
さてさて、今日ご紹介すする本はこれ。

ビックウェンズデイ だ。
'60年代のサーフィン映画のノベライズだね。
……といっても、小説としても、じゅうぶんに楽しめる。むしろ、映画では描かれなかった主人公たちの背景なども書かれてい、より奥深く読むことができる。
では、恒例の裏表紙の概要をどうぞ。
何十年かに一度、カリフォルニアの海岸に押し寄せるという伝説の大波。それは決まって水曜日だと言い伝えられている。このビッグウェンズデイに乗ることが、サーファーたちの生涯の夢なのだ。
サーフィンで結ばれた若者たち―マット、リロイ、ジャック。波乗りと女の子と馬鹿騒ぎパーティー。それがかれらの青春だった。だが待ち望んだビッグウェンズデイが訪れないまま、3人は散り散りにならねばならなかった。
仲間の1人はベトナムで死に、生き残った者たちにも、あの波乗りの日々は遠く去ろうとしていた頃、ついにその大波がやってきた!
サーフィンに夢をかけた若者たちを通して鮮やかに描く60年代の青春。
……で、下の動画が、映画「ビッグウェンズデイ」の宣伝。
この映画を観たのは、高校2年のときだ。当時ぼくは波乗りをやっていた。毎週日曜日、ときには学校をさぼって、九十九里に住む友人の家を拠点にして、波乗りに明け暮れていた。
長い休みのときは、何日間もそいつの家に泊まり、朝と夕方は波乗り、日中は昼寝かパチンコ、夜は酒飲んだり遅くまで仲間と語ったりという、まさにこのビッグウェンズデイの若者たちと同じ青春(?)の日々を送った。
※その仲間の家はものすごい放任主義で、仲間のたまり場になっていた。
そのとき仲間の1人が「ビッグウェンズデイ」のビデオを持ってきたのだ。それをみんなで食い入るように観た。
すげえ、これが本物のサーフィンなんだなあ……
映画を観て感激したぼくらは、夜遅くまで夢を語り合った。
「おい、高校出たら、ぜってえ(絶対)外国いんべよ(いこうぜ)なあ」
「おう、いんべよお(いこうぜ)」
「そんでおお(それでよ)、プロのサーファーになんべよ(なろうぜ)」
「どこがいい? やっぱカリフォルニアか?」
「ハワイだべ、ハワイ」
「いや、オーストラリアだべ。あそこはよお、ワーキングホリデーってビザがあんだよ」
「何だ、そりゃ?」
「アルバイトしながらよ、1年間まで滞在できんだつけ(できるんだよ)」
「マジで? おう、オーストラリアいんべ(いこう)」
「おういんべよ(いこうぜ)」
それはもう、マジでぼくらの合言葉になった。外国。オーストラリア。その言葉の持つ響きは、かすんで見えなかった将来に、カンテラのように光をともした。
高校3年になり、その夏がすぎると、仲間たちはみんな就職を決めはじめた。中には専門学校にいく者もいたが、どちらにせよ、その将来像に「外国行き」の匂いはいっさいなかった。
「夢だけじゃ暮らせねえべよ。俺らもう18だぞ」
やがて卒業を迎え、みんなそれぞれの道を歩きはじめた。
ぼくはアルバイトをしながら、毎日波乗りに明け暮れた。夢を決行するためだった。金をためてオーストラリアにいくと決めていた。
そんなぼくを、仲間はとがめた。おまえはガキだ。何もわかってない……。
いつしかその言葉は、おまえ~から、あいつ~にかわっていた。あいつはガキだ……、つまり遠くからその声が聞こえてくるようになったのだ。そう疎遠になっていったのである。
それでもぼくはオーストラリアにいこうと決めていた。バイトをいくつもかけ持ちし、出費もおさえた。
……で、22歳の冬にオーストラリアにわたった。そこで1年間、自分なりの旅をした……
みんなとの約束を果たしのだ。
あの旅は、今でもぼくの一番の財産だ。そしてそれはすべて、仲間と一緒に観た「ビッグウェンズデイ」の映画からはじまった。
「ビッグウェンズデイ」の小説版を手にしたのは、ずいぶん後になってからだ。とある旅の途中に、偶然、古本屋で見つけた。1も2もなく、ぼくはその本を買った。
本も映画も、ぼくはもう何度も読み、観ている。
本を読むたび、あるいは映画を観るたび、あの日、九十九里の仲間の家で夜通し語った日が、鮮明によみがえってくる。
みんな散り散りになった。それでもぼくにとって、今でもたいせつな仲間だ。
ビッグウェンズデイの主人公たちも、大人になってみんな散り散りになる。だがかれらは、物語のラスト、ビッグウェンズデイにのぞむときに再会を果たす。かれらをつないでいたのは、やっぱり海だったのだ。
今でもぼくは、たまの休みの日に、愛車に板を積んで波乗りに出かけている。
そのときいつも、昔の仲間に逢うんじゃないかと考えてしまうのだ。海につき、沖に出て、その姿がないと確認し、ほっとしたのかがっかりしたのか、自分でも判別できない思いを抱く。
いつか逢えるだろうか。
ぼくらのビッグウェンズデイはおとずれるだろうか。
わからない。わからないけど、ぼくは波乗りだけはつづけていく。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。
刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング
オリジナルワンな生き方 ヒュー・マクラウド
スローカーブを、もう一球 山際淳司
リッツカールトンで育まれたホスピタリティノート 高野登
船に乗れ 藤谷治
ルリユールおじさん いせひでこ
超訳ニーチェの言葉
白銀ジャック 東野圭吾
神さまはハーレーに乗って ジョン・ブレイディ
気まぐれロボット 星新一
BRUTUS 2011 2/1号
男の作法
天国はまだ遠く 瀬尾まいこ
最後の授業 アルフォンス・ドーテ
モーラとわたし おーなり由子
老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ
傷だらけの店長~それでもやらねばならない~ 伊達雅彦
Sports Graphic Number「スポーツグラフィック ナンバー」 3/24 ルーキー秘話
奇跡は路上に落ちている 軌保博光
小屋番三六五日
O型自分の説明書 Jamais Jamais
一瞬の風になれ 佐藤多佳子
バカでも年収1000万円 伊藤喜之
ユニット 佐々木譲
桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ
自分でつくる うまい海軍めし 海軍めし愛好会
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Comments
まいまいさんへ
コメントありがとうございます。
まいまいさん、映画好きなんですね?
ぼくも好きなんですが、どちらかといえば古い映画が好きで、このビッグウェンズデイなんかも、どこかでリバイバルやってくれないかな、と待ち望んでるんですが…
ぼく自身のビッグウェンズデイは、そうですねえ……、きてほしいような、こないでほしいような……。
疎遠になった友達に逢うのも、ホントはすごく逢いたいけど、ちょっと怖いような、複雑な気持ちです。
ぼく自身が、誰から見ても、説教されるような人生を送ってるんで(笑)
あたたまるコメントありがとうございました。
読書記事のコーナーなんですけど、いつも脱線しちゃうんですね。
まいまいさん、映画好きなんですね?
ぼくも好きなんですが、どちらかといえば古い映画が好きで、このビッグウェンズデイなんかも、どこかでリバイバルやってくれないかな、と待ち望んでるんですが…
ぼく自身のビッグウェンズデイは、そうですねえ……、きてほしいような、こないでほしいような……。
疎遠になった友達に逢うのも、ホントはすごく逢いたいけど、ちょっと怖いような、複雑な気持ちです。
ぼく自身が、誰から見ても、説教されるような人生を送ってるんで(笑)
あたたまるコメントありがとうございました。
読書記事のコーナーなんですけど、いつも脱線しちゃうんですね。
公開した年に映画館で見ました(笑)
もちろんサーフィンをやってたわけではなく
ヒマとお金さえあれば映画ばかり見ていたのです。
あのころの日々をやはりちょっとの苦みを持って思い出します。
最後にスゴイ波が来るんだこの映画!(笑)
道下さんの思い出もまるで映画のようですね。
来るかもしれません。ビッグウェンズデイ。
腕を磨いておいた方がいいですよ。(*^_^*)