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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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旅について 遊びについて 夢について 人生観について 本について 愛用品について ありったけの思いを語ります

 

絵を描きたいあなたへ 永沢まこと

世の中がどんなにくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。

こんにちは。今週も「道下森の本棚」の時間がやってきました。

さて今日ご紹介する本はこちら。

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永沢まこと「絵を描きたいあなたへ」だ。


この本を買って読んだのは、今から2年前、長くやっていた商売(パン売り)をやめたたときのことだ。かなり真剣にやっていた仕事だったのだが、ちょっといろいろあって自ら廃業したのだ。

廃業といっても、前向きな気持ちで仕事をやめたので、先々に対する不安はまったくなかった。むしろ希望に満ちていた。目の前に、夢へとつづく扉がいくつも並んでいる、そんな感じだった。

どの扉を開くかは、そのうち心が気づくだろうと思い、しばらく本を乱読してすごした。その中の一冊が、この永沢まこと著「絵を描きたいあなへ」だったのだ。

本を読み終えると、ぼくの身体は熱くなった。どれくらい熱くなったかとというと、世界中の夏を全部合わせたくらい。とにかく、ものすごく熱くなった。


絵だ! 俺は絵を描いて生きていくんだ! きっとそういうふうに決まっていたんだ、はじめから!


……とはいえ、絵なんて中学生のときの美術の授業で描いた以来、ただの一度もやったことがなかった。そこで、とにかくまずは基本から、ってことで、この「絵を描きたいあなたへ」に書かれているとおりに、つまり永沢まことさんの教えるとおりにやってみた。


まずは画材をそろえた。もちろん、すべて永沢まことさんのおすすめする道具だ。

・ペン       ピグマ・グラフィック(サクラクレパス製) 0.4ミリ2本。1.0ミリ1本。
・スケッチブック F4サイズ・スケッチブック。F6サイズ・スケッチブック。小型スケッチブック(マルマン製)
・水彩絵具セット 専門家固形水彩24色セット(ラウニー製)
・筆        ナイロン筆GALERIA ROUND No4.6.8(ウィンザー&ニュートン製)
・パレット     中型パレット(ホルベイン製)
・筆洗器      三つ重ね式プラスティック筆洗器(ヌーベル製)


これらの道具を、新宿まで遠征して「世界堂」で買った。絵で食っていくつもりなので、当然、領収書も忘れずにもらった。※全部で2万円以上かかった。

……で、早速、描いた!

ところで、絵を描くにあたって、永沢さんは二つのルールをもうけている。

一つは、何を描くときも「実物」を見て描くこと。想像や記憶で描かない。また写真などを見て描くのも駄目。しっかりと「実物」を見て、そのとおりに描くこと。

もう一つは、何を描くときもペンを使い、「線」で描くこと。すべてのものを、しっかりと「線」で表すこと。


以下はそのとき描いた絵だ。


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……。

最悪だ……。

平凡で、光るものが何もない。だから描いていてもちっとも楽しくなかった。それでもこりずに描きつづけたが、結果は同じだった。ぼくは絵の道具を部屋の隅にしまい、描くのをやめた。

自分の進むべき道が絵ではないとわかった以上、べつの道をさがす必要があった。だが一つの道への扉が閉ざされたとたん、あんなにたくさんあった夢へとつづく扉が、一つも見えなくなっていた。

実際もう夢なんて追ってる年齢ではないのだ。地道な仕事をさがした方がいいのかもしれない。

そう思うものの、そうやって妥協して自分を小さくしてしまうことに抵抗があった。一度きりの人生だ。年齢など関係ない。いや、何も得られないで年を食ってしまったからこそ、一発逆転の何かが必要なんじゃないのか!

ぼくは旅に出ることにした。

いつだって、何かが終わり、次の何かをはじめるまでの間、ぼくは旅に出る。今までずっとそうやってきた。そうやってきたことで、もがき苦しみながらも、どうにかこうにか自分の道を歩いてこられたのだ。

行き先はモロッコにした。1カ月の1人旅だ。

パッキングをすませ、あとは翌日の出発を待つばかりとなったそのとき、頭にひらめくものがあった。


絵だ!

旅先で絵を描くんだ!


ぼくは急いで絵の道具を部屋の隅から引っ張り出し、バッグに入れた。そして永沢まことの「絵を描きたいあなたへ」を手に取り、第四章を読んだ。「海外旅行でスケッチする」。そう、永沢まことさんは、本書で海外旅行での絵を強くすすめているのだ。永沢さんが描く、ヨーロッパ諸国やアメリカなどの絵は、ぼくの心をはげしく揺さぶった。こんな絵が描きたいと強く思った。

ふたたび身体が熱くなってきた。絵だ! 俺は絵なんだ! 絵を描くことが、俺の人生なんだ!

自分の絵心のなさは、このとき完全に頭から消えていた。1カ月、旅をしながら絵ばかり描いていれば、心にひそむ才能が開花するにちがいない。そう思った。


スペインを経由し、モロッコへ。

……で、旅先で描いた絵がこれだ。


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やっぱり駄目だった……。

描きたいように描けてない。自分のイメージに技術が追いつかない。だいたい、この絵は何だ? 全部ごまかしじゃないか! 永沢まことは「実物」を見て、そのとおりに書くこと、といっていた。それすらぼくはできなかった。

結局その旅で、前半にこの4枚を描いたきり、その後は絵の道具は一度も手に取らなかった。


帰国後、ぼくは仕事をはじめた。夢に直結しない、平凡な仕事だ。その仕事に満足も納得もしていないけど、まずは生活をしなくてはならない。だから好きでもない今の仕事を、ぼくは好きな仕事であるかのように真剣にやっている。

今でもときどき、何かの拍子に「やっぱり俺は絵を描くべくなんじゃないのか」と思うことがある。それがかんちがいだとわかってはいても、心が描きたいと叫ぶのだ。

人生まで背負いこまずに趣味の域でやれば、そこから何かが生まれるかもしれない。

いつかそんなふうにゆとりを持って描ける日かくればいいと思う。だが今はまだ、夢へとつづく扉をさがすことで手いっぱいなのだ。



ぼくを一度はその気にさせた、永沢まことさんのすてきな絵を見たい方は、こちらの「永沢まことオフィシャルサイト」をご覧ください。
http://www.makoart.com/



今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。

刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング
オリジナルワンな生き方 ヒュー・マクラウド
スローカーブを、もう一球 山際淳司
リッツカールトンで育まれたホスピタリティノート 高野登
船に乗れ 藤谷治
ルリユールおじさん いせひでこ
超訳ニーチェの言葉
白銀ジャック 東野圭吾
神さまはハーレーに乗って ジョン・ブレイディ
気まぐれロボット 星新一
BRUTUS 2011 2/1号
男の作法
天国はまだ遠く 瀬尾まいこ
最後の授業 アルフォンス・ドーテ
モーラとわたし おーなり由子
老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ
傷だらけの店長~それでもやらねばならない~ 伊達雅彦
Sports Graphic Number「スポーツグラフィック ナンバー」 3/24 ルーキー秘話
奇跡は路上に落ちている 軌保博光
小屋番三六五日
O型自分の説明書 Jamais Jamais
一瞬の風になれ 佐藤多佳子
バカでも年収1000万円 伊藤喜之
ユニット 佐々木譲
桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ
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スタインベック短編集
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Comments

おおっ。 
笑えませんよ~。私より、全然、上手いですよ!絵で食べて行こうと思ったら、不満だらけだろうけれど。楽しんで時々、描いて欲しいなぁ。(で、見せて下さい)

面白い。やっぱり描く人の内面が反映されるのかな。
モロッコの絵、印象的。人がうじゃうじゃしてる感じが。

永沢まことさん方式なら、描けるかなぁと私も考えたことありました。
何といっても、絵画との出会いがベラスケスで。不幸にも、絵とはそういうものだと思ってしまったため、自分には描けないと決め込んでしまったのです。

それでも、画家が憧れの職業でしたねぇ・・・ずっと。
今となっては楽しく描けて、身近な人を楽しませることができたら、それでいいんですけど。それすらも、身構えますね。下手な絵を描く暇あったら他のことした方が・・・とか考えちゃって。

絵って不思議なものですねぇ。絵心って、何なんでしょうねぇ。
自分には無理だわと思っても、やっぱり時々描きたくなるのです。
いつになるかわからないけど、次の旅行の時は、旅日記を描いてみたいな。

他にも絵があったら、見たいなぁ。ふふ、でも趣味より夢だ!ってお気持ちはよくわかります。モノになる可能性が低いことに構ってられない!って感じでしょ?私も今は絵はやめて、老後の趣味にとっておこうかと思ったりもしますよ・・・(笑)
こんばんは 
私も「絵が描けたらなあ」と妄想します。
イメージに技術が追いつかないっていうの、けっこう切ない気持ちですよね。

でも道下さんには「文章」という武器があるからうらやましいです。
自分の思いを表現できるってすごいことですよね。
彩月氷香さんへ 
コメントありがとう!

性格が極端なんで、何かはじめるとき、すぐにトップをめざしちゃうんですよねえ。山登りもセブンサミッツ(七大陸最高峰踏破)をやってやろうって思ってはじめたし、サーフィンもプロになるぞって思ったし。

いや、趣味を持つのはいいと思うんです。だけどぼくの場合、今現在仕事がグダグダだから、趣味を楽しむ資格がないんじゃないかって考えちゃうんですよね。仕事さえしっかりしていれば、趣味を楽しむ余裕もできると思うんですけど。

だけど考えてみれば、このブログだって趣味だし、その趣味をもっとてんこ盛りにしちゃえって意味で、絵をやってみるのもいいのかなあ。自分がつくったものを発表する場があるのって、数年前から考えたら幸せなことですし。

よし、じゃあこうしましょう。ぼくも絵をやりますから、彩月さんも絵を描いてください(笑) そんでときどきこのブログにのせますから、彩月さんもご自分の絵をブログにのせてください(笑)

お互い、絵描きの夢はついえても、それぞれのブログのデザートにはなると思うんで。

やりたい、描きたい、って心がいってるんだから、やった方がいいんですよ!
まいまいさんへ 
コメントありがとうございます!

ええっ、何いってんですか?
ぼくの文章が「武器」だなんて、そんなものじゃ敵は倒せませんよ。
(……と謙遜しつつ、顔はにやついております)

まいまいさんのブログ記事こそ、テーマがしっかりしてて、読んでいておもしろいです。
読者がついコメントしたくなるような、そんな記事ばかりですよ。

ちなみにサッカーですが、以前、水戸と山形の試合前の応援合戦を観て、こんなすばらしい楽しみ方をするサポーターがいるんだなあ、と感動したんです。それ以来、水戸と山形は応援してます。

追記。
なぜだか、ぼくのパソコン、「水戸」がうまく変換されません。「ミと」ってなっちゃうので、「水」と「戸」にわけてキーを押してます。#茨城あるある
No title 
そうなんですよ、永沢まことの絵を見たり先生が描いている姿を見たらなんだこんなのでいいんだと思って自分にも描ける気分になってしまうんです。

描けないんだなあこれが・・・。

やっぱり永沢先生はすごいんだ。
ビゴトラさんへ 
ビゴトラさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

そうなんですよ。ぼくも永沢まことさんの絵を見て、「こんなの描きたい」と思い、著書を読むと、何だか本当に自分でも描けそうな気がしてきて、思い切って道具をそろえました。しかし描きはじめてみると、思ったようにいかなくて、挫折……

……という流れでした。

たしかに永沢まこと先生は偉大ですね。ただ、きっとぼくたちももっと根気をもって取り組めば、先生ほどにうまくはなれないとしても、自分なりの絵が確立できたのかもしれませんね。

ぼくは絵はすっかりあきらめましたが、ビゴトラさん、機会があったらまた挑戦してください。ビゴトラさんの絵、見てみたいです。

 
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