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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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白夜行 東野圭吾

先日、過去記事にコメントが入った。

去年の12月23日に書いた「道下森の本棚」の記事だ。→白銀ジャック 東野圭吾

ぼくの記事に対し、「不満だ」というコメントだが、まあ、しょうがないかな、と思う。
こっちも作品に対して否定的な評価をした以上、お怒りのコメントがよせられるのは覚悟している。

……のだが、このコメントにだけは、おいおいちょっと待ってくれよ、と思ってしまった。

この「白銀ジャック」については、たしかに記事の中で「駄目」の評価をくだした。だけど記事をよく読んでいただけたらわかるように、ただ悪口だけを書いたのではない。東野圭吾の作品のすごさを知る者として、これはないだろうと思ったからこそ、エールの意味もこめて書いたのだ。

それを「駄目」という評価の部分だけ切り取ってコメントされても……

とくにこのコメントを読んだとき、ブログをやめようかな、と考えていた(参照→8/16 自分にとって、ブログとは何か)ので、こんな気分のときにこんなコメント送ってこなくたっていいだろ、とマジで腹が立った。

しかもコメントの仕方が、どうも書き逃げみたいな感じもしたので、それもいい気分ではなかった。真摯さが伝わってこないのだ。

そういういういきさつもあり、だったら東野圭吾の本物を紹介してやろうじゃねえか、と、本棚の中からとっておきを一冊取り出した。

今日の「道下森の本棚」は、そのとっておきを紹介する。

これだ!

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東野圭吾 白夜行だ。

東野圭吾といえば、映画でヒットした「秘密」や「手紙」、テレビのドラマで人気となった「ガリレオ」シリーズや「加賀」シリーズなど、有名な作品が数多くあるが、やっぱり「白夜行」が群を抜いているだろう。

あまり人に「これ読め」と本をすすめたりしないタチなのだが、この本はかなりの人にすすめた。何人かの人にはプレゼントまでした。

その人たちの感想は……

「すごかった!」「マジでおもしろかった」「身体がぞわぞわきた」「マジ、ハンパなかったッスよ」「ヤバかった」「ヤバすぎだよ」「何これ、激ヤバなんだけど」「ハマるんだけど」「これ、めっちゃきましたよ」「答えがわかったときの瞬間ヤバすぎ」

……などなど、どれも興奮を隠せないといったものばかりだった。

「ちっと俺には長すぎッスね」といった後輩と、「どこかになくしちった」とほざいた不届きな友人以外は、みな大絶賛だった。「けっこうおもしろかった」とか「よかった」といった、普通のコメントはいっさいなかった。全員、興奮しながら感想をのべていた。

ぼくの感想も同じだ。「マジ、ハンパなくヤバい!」だ。そう感じた本は、生まれてから今までで、10冊あるかどうかだろう。※そのうちの一冊は子ども頃に読んだ永遠のバイブル「あしたのジョー」だ。


さて、この本、一応はミステリーというカテゴリーに入るのだろうが、犯人さがしを楽しむ類のものではない。かといって、登場人物たちの人間ドラマを楽しむものともいえない。

では、何を楽しむものなのか。

ズバリ、ストーリーを楽しむもの、つまり物語そのものを存分に楽しむための本なのだ。あるいは物語という名のパズルの完成を楽しむというべきか。いずれにしろこの「白夜行」は、究極のエンターテイメントなのである。

抽象的な説明をしても伝わらないと思うので、恒例の文庫本裏表紙の概要を読んでほしい。


1973年、大阪の廃墟ビルで一
人の質屋が殺された。容疑者
は次々に浮かぶが、結局、事件
は迷宮入りする。被害者の息子
桐原亮司と、「容疑者」の娘
西本雪穂――暗い目をした少
年と、並外れて美しい少女は、
その後、全く別々の道を歩ん
で行く。二人の周囲に見え隠
れする、幾つもの恐るべき犯
罪。だが、何も「証拠」はない。
そして十九年……。行き詰まる
精緻な構成と、抒情詩的スケ
ール。心を失った人間の悲劇
を描く、傑作ミステリー長編!



ところで物語は、こんなふうにはじまる。

 近鉄布施駅を出て、線路脇を西に向かって歩きだした。十月だというのにひどく蒸し暑い。そのくせ地面は乾いていて、トラックが勢いよく通り過ぎると、その拍子に砂埃が目に入りそうになった。顔をしかめ目元をこすった。
 笹垣潤三の足取りは、決して軽いとはいえなかった。本来ならば今日は非番のはずだった。久しぶりに、のんびり読書でもしようと思っていた。今日のために、松本清張のの新作を読まないでいたのだ。



物語がはじまった1973年当時、この刑事 笹垣潤三は推定年齢で40歳前後。本来非番であった彼は、大阪の廃墟ビルでの「質屋殺し」の現場に向かう。
それが19年におよぶこの長い長いミステリーのはじまりなのだが、物語の重要な人物であるこの刑事は、初動捜査が描かれる第一章を終えると、その後しばらく物語が離れる。ふたたび登場するのは第八章、事件から約10年が経ったときだ。
(再登場したときは、おおおっ、と興奮し、居住まいを正さずにはいられなかった)

一方、裏表紙の概要にあるように、この物語の主人公は、被害者の息子 桐原亮司と、容疑者の娘 西本雪穂だ。物語のはじまった1973年当時、2人は小学5年生だった。それから19年、2人が30歳になるまでの物語だ。

ところがこの物語は、この2人の主人公の視点ではいっさい描かれない。彼らを取り巻く複数の(数えるのがめんどうなくらい多数の)人間の視点でのみ描かれていく。だから主人公でありながら、2人の内面描写はゼロだ。

この手法が、この「白夜行」の最大の魅力であり、先ほどぼくが究極のエンターテイメントといったゆえんだ。

複数の人物が順番に、ちょっとずつ、本当にちょっとずつ、読者にヒントを与えるようにして、物語は展開していく。「超」バラバラなジグソーパズルのピースが、バラバラなまま、一つ、また一つとつながっていき、もどかしいほどゆっくりと完成に近づいていく。緊張感を持続させながら。

そのパズルが完成したときの衝撃ときたら……

これ以上は書けない。ぜひ読んでくれとしか、ぼくにはいえない。

読んだらきっと、皆さんはこう感想を述べるはずだ。「マジ、ハンパなくヤバい」……と。


さて余談だが、この「白夜行」は、第122回直木賞の候補作になった。そのとき、選考委員である渡辺淳一氏に、「人間の内面が描けてない」と酷評された話は、東野ファンの間では有名だ。
※渡辺氏はその後も、候補作にあがった東野作品を同様の理由で斬り捨てている。
参照→直木賞 選評の概要 第122回

たしかに小説で一番重要なのは、人間が描けているかどうかだ。だから渡辺氏のいい分はもっともだろう。

だけど、「白夜行」に関していえば、主人公の内面が描かれていないからこそ、読者の無限の想像力をかきたてたのだ、とぼくは思う。この物語の圧倒的なスケールは、東野圭吾の「マジ、ハンパなくヤバい」手法から生み出されたものなのだ、と。


今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。

刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング
オリジナルワンな生き方 ヒュー・マクラウド
スローカーブを、もう一球 山際淳司
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ルリユールおじさん いせひでこ
超訳ニーチェの言葉
白銀ジャック 東野圭吾
神さまはハーレーに乗って ジョン・ブレイディ
気まぐれロボット 星新一
BRUTUS 2011 2/1号
男の作法
天国はまだ遠く 瀬尾まいこ
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絵を描きたいあなたへ 永沢まこと



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