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魂の落書き 〜おでんまちのひ 店主の日記〜

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獨白「北の国から」ノーツ 倉本聰

世の中がどんなにくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。

こんにちは。今週も「道下森の本棚」の時間がやってきました。

※この前置きは読者の皆さんの間で不評なのだが、これやらないと先に進めないので、ご理解くださいm(__)m


さて、今日ご紹介するのは、これ。

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倉本聰著『獨白「北の国からノーツ』だ。

この本は、倉本聰が「富良野塾」OBライターへの特別講義として、「北の国から」の最初のシリーズ全24話について語ったものだ。

ライター、すなわち書くことを職業とする者にとって、これほど貴重な講義はない。その講義のわずかな部分でも覗けるのなら、と思い、本屋で見つけるやいなや購入した。

……で、読んだ。ひさびさの一気読みだ。


ところで、「北の国から」は、ぼくは残念ながらリアルタイムでは観ていない。だいぶ後になってから、レンタルビデオで借りてきて観た。

いいドラマだ、と思う。

かなりのフリークになると、名場面の台詞をおぼえていたり、「五郎の家」を見るために北海道にいったりしているが、ぼくはそこまでではない。

ただ物語が好きな者として、彼がつくる作品は「本物」だと思う。そしてもちろん「北の国から」もまちがいなく本物だ。

倉本聰の書くドラマはほかにも好きなものがあって、たとえば「昨日、悲別で」は大好きなドラマだし、もっと古いのを挙げると「前略、おふくろ様」も好きだ(もちろんリアルタイムでは観られなかったが)。最近では、「優しい時間」という寺尾聰と二宮和也が親子役をやったドラマが心に残っている。

ぶっちゃけていえば、倉本聰は、ぼくの中では神だ。

物語をつくる人の中では、この倉本聰と、スティーヴン・キング、それとチャップリンがぼくの神。

まあ、そういう話は置いといて……

本書の話に戻る。

いろんな意味で考えさせられた、というのが率直な感想だ。

本書のテーマの一つでもあるが、この倉本聰、きっぱりと文明を敵対視している。もう、はっきりと悪と決めつけている。すっかりパソコン生活にハマっているぼくには耳が痛い話ばかりだ。

とくに印象に残った話が、本書のはじめの方なんだけど、想像力の話。
倉本聰がNHKとの確執から仕事をほされ、北海道に移り住んだ当初の話。仕事らしい仕事はほとんどせずに、ジープで原野を駆けめぐって、埋もれた廃屋ばかり見ていたという。
廃屋に入り、じっとそこを見る。するとそこの住人が家捨てたときの情景が見えてくる。そんなことばかりやっていたという。
想像力がぐんぐん磨かれた、と倉本聰は語っていた。そしてこう語を継いだ。


今の若者に想像力がないのは、きっとこういう、一見無駄な時間がなくて面白いことがまわりに多すぎるせいだろうね。コンピューターとかケイタイとか、面白くて仕様がないものがあふれすぎている。でも俺みたいに廃屋に坐って、そのときの情景を時間をかけてじっくり想像してみるって時間も、物創りする者には絶対大切なことなンだって、これは確信以て言えると思いますね。


この言葉は耳が痛かった。

ぼくも今、生活のさなかにちょっとした時間が空くと、すぐにケータイを除くクセがついている。ツイッターとか、ネットとか、ついつい見てしまうのだ。

たとえば食堂に入る。昔は注文した品が出てくるまで、カウンター越しに厨房を眺めてあれこれと想像したものだ。今、姉妹ブログで連載中の「お父さんとの旅」も、そんな想像から生まれた物語だ。

なのに今は、注文し終えると同時に、まるでそれが仕事であるかのように、すぐにケータイを見る。どんな顔して見ているか、鏡を見る必要はない。まわりを見ればいいのだ。同じようにケータイを覗いている人がたくさんいるから。いや、ほとんどの人がそうだといっていい。

まあ、人は人、自分は自分で、いくら神と崇める倉本聰が文明を敵対視していても、ぼくはもうパソコンは手離せないし、ツイッターもやめる気はない。マイナスの部分も多々あるだろうが、それでも自分の考えや思いを伝えるツールとしてのツイッターやブログは、今のぼくにとって明らかにプラスだ。そのおかげで生活に張りができたことはまちがいない。

しかし、倉本聰が考える「文明は悪だ」という考えは、極端に走らなければ共感する。いや、本当は、彼のように極端なほどに文明を否定するのが、本来の人間の本質なのかもしれない。



ぼくは自分の人生で、文明生活を離れた経験が2度ある。

1度目は、23歳のとき、西オーストラリアのダンピア沖の海の上で真珠の養殖の仕事をしたときだ。オーストラリアのダイバーらとハウスボートで暮らした3カ月は、寝る場所と食べる物、移動手段としての船こそあったものの、ほかは海と空と無人島だけの世界だった。

2度目は、おととしの夏、南アルプスの山小屋で小屋番の仕事をしたときだ。ここにも3カ月いた。こっちは海ではなく山だが、1度目と同じく自然の世界だった。

どちらも仕事であり、それなりにシステム化されたところもあったから、100%の自然とはいえないかもしれない。それでも文明社会から離れた生活は、はっきりと「リアル」を感じた。ごまかしがきかないのだ。ごまかそうとすれば、必ずしっぺ返しを食う。

だから厳しい生活だったけど、1日1日が充足していた。

その生活を終え、文明社会の地に足を踏み入れたとき、はっきりと感じるのだ。おもちゃのようだ、と。建物も道路も信号も車も、そこを歩く人々も、みんな安っぽいおもちゃだ、と。

これはもう、申し訳ないけど、理屈ではなくマジでそう感じた。

倉本聰は、ぼくが感じたものの数倍本質をついたものを感じてるのだろう。だから文明を敵対視しつづけるのだろう。

一方のぼくは、感じるのは町に出た一瞬だけで、すぐにひさしぶりに味わう文明を歓迎し、どっぷりとつかり、いつしか元の生活に戻ってしまう。もちろん、今も文明社会の真っただ中だ。



本書はその後も、ドラマ「北の国から」の象徴的なシーンを挙げながら、さまざまなことについて語る。人間同士のつきあいとか、このたびの東日本大震災の話とか。くわしくはここでは割愛するが、やはり一貫としてあるのは、文明社会に対する提言だった。

本質をついた話ばかりで、簡単に読めた割には内容の深い本だったと思う。

今、ぼくのこの記事を読んでる皆さんは、少なくともパソコンはやっているということだから、文明社会につかっているといっていいだろう。それに押しつぶされないよう、自分の中の「ここまで」を考える意味でも、こり「獨白」は読んでみてほしい。

いい本だから。

ただ残念だったのは、倉本聰が自然に対する敵としての文明を「東京」と表現していたことだ。いわんとするところには共感するが、それは経済の中心としての「東京」であって、昔からそこに住む「東京」の人たちは、田舎に住む人と同じように地域のつながり、人と人とのつながりを持って暮らしてるから。

「東京」=「冷たい・人と人のつながりがない」と考えるのは、あまりに浅はかな考えだ。

ぼくは東京の人間ではないから、擁護する必要はないのだが、そういう短絡的な表現は、「江戸っ子」たちがあんまりにもかわいそうだと、いつも思ってしまう。

「前略おふくろ様」などで東京の下町を描いた倉本さんなら、その辺はちゃんとわけて書いてほしかった。





今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。

刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング
オリジナルワンな生き方 ヒュー・マクラウド
スローカーブを、もう一球 山際淳司
リッツカールトンで育まれたホスピタリティノート 高野登
船に乗れ 藤谷治
ルリユールおじさん いせひでこ
超訳ニーチェの言葉
白銀ジャック 東野圭吾
神さまはハーレーに乗って ジョン・ブレイディ
気まぐれロボット 星新一
BRUTUS 2011 2/1号
男の作法
天国はまだ遠く 瀬尾まいこ
最後の授業 アルフォンス・ドーテ
モーラとわたし おーなり由子
老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ
傷だらけの店長~それでもやらねばならない~ 伊達雅彦
Sports Graphic Number「スポーツグラフィック ナンバー」 3/24 ルーキー秘話
奇跡は路上に落ちている 軌保博光
小屋番三六五日
O型自分の説明書 Jamais Jamais
一瞬の風になれ 佐藤多佳子
バカでも年収1000万円 伊藤喜之
ユニット 佐々木譲
桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ
自分でつくる うまい海軍めし 海軍めし愛好会
スタインベック短編集
金持ち父さん 貧乏父さん ロバート・キヨサキ
ビッグウェンズデイ デニス・アーパーク ジョン・ミリアス
OZmagazin8月号
絵を描きたいあなたへ 永沢まこと
白夜行 東野圭吾
デッドエンドの思い出 よしもとばなな



よかったらこちらの姉妹ブログも覗いてみてください。

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ここからどうぞ→お父さんとの旅『入り口』



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Comments

これは読む! 
ということで、さっそく図書館で予約しました。
私、もともと都会生活どっぷりながらも。
文明社会批判ってところは、ほぼ倉本さん並みでした。
ケータイもずっと持たなかったし、テレビも見なかったし、
パソコンも、ツイッターも、バカみたいと思ってました。

確かに。その頃の私の方が、精神の深淵のほとりにいたと思います。
でもね。それは、現代と、現代に生きる人を拒絶することなんじゃないかな。
私ほんとうに、周りの人間、全部バカだ、くらいに思ってた。

文明社会に毒されて生きている人が大半だとしても。
それを完全否定することは、「自分だけは違う」という自己満足なだけで。

正直、今、しんどくて。まさに押し潰されかけてるかも。
現代文明社会から逃亡したい気分になっているけれど。
そこに育つものもあるという希望は捨てたくないよね。
人間は、絶対、後ろに進むことはできないのだし。

「東京」についての考察、いいですね。
うん、「文明」は、意外と田舎にもあるしねぇ・・・。

私もこの本読んでから、ゆっくり考えてみたいです。
彩月氷香さんへ 
コメントありがとう。

ぼくも同じで、かつては文明を否定して生きてました。パソコンどころかワープロすら邪道だって考えてて、小説もずっと万年筆で書いてたくらい。

新しい機械がどんどん生まれるこの世界を、真剣に危惧していました。

だけど携帯電話は早くから持ってて。仕事で必要だったのと、1人で暮らしてたから、持ってれば親も安心だろうということで。普通の電話をひく金がなかったので。

だから文明社会は否定しつつも、携帯電話を持つことで文明社会とつながってたんです。それは居心地がわるかったけど、だけどやっぱり便利だし、持っていることで束縛されることより自由であることの方が多いと気づいて。

それに一番大きかったのは、メールの出現ですね。

ぼく、聾唖(ろうあ)の友達がいて、彼との連絡がメールのおかげで完璧になった。かれも含めた聾唖者にとって、携帯電話(メール)は本当に「感謝すべき文明」で、そのおかげで自由に生活できるようになったんですね。かれらは公衆電話なんて使えないんですから。その不安を考えると、文明って必ずしも「悪」ではないなと考えはじめたんです。

そのあたりのことはいつかブログに書こうと思ってるんですが、普通に暮らしてるとわからないところで、文明って役に立ってるんですよね。

だから今は、文明社会も肯定しています。

それでも倉本氏がいう「文明=悪」という考えも、自分の中に持っていたい。で、自分なりにバランスを取って生きていきたい。そう考えてます。

いい本ですよ。彩月さんが読むといってくれて本当にうれしかった。「持ち歩ける~」で感想が聴けたら、いいなと思います。

何か、元気がないようで。心配だけど、時間という川が、彩月さんを乗せた舟を、いい方向に流してくれると信じてます。何もしてあげられなくて、ちょっともどかしいけど。

季節もかわっていきます。気持ちが入れかわる時期なのかもしれません。ぼくも、かわっていきたいと思います。
読んでみます。 
道下 森さん、こんばんは。

ツイッターを退会してから、ますます「文明」から遠ざかりつつあるハルでございます(笑

「北の国から」、私はリアルタイムで見ていました。
最初は、馬鹿にしてました。都会否定・田舎賛歌・ステレオタイプなアットホームドラマだろうと。
でも、見続けて次を期待させてしまうだけの力が、そこにはありました。
北海道の素晴らしい自然はもちろん。
でも、やはり倉本氏の脚本の力だったのだと思います。

この本は未読ですが、道下さんが書かれたように
「東京=冷たい・人と人のつながりがない」というよく言われる言葉は
東京生まれの私にはとても寂しいです。
田舎のほうが、よほど冷たいと感じることもあります。
ただ、両方の暮らしを体験してみると、NHKのニュースひとつ見ても
「ああ、都会の人の目線だ」と感じることは多々ありますね。
それぐらい違う、ということは確かにあるかもしれません。

難病の友人がいるんですが、彼女とはパソコンを通じてしか話ができません。
彼女はパソコンから、いろんな人たちに勇気や愛情を注いでくれているんですよ。
もしこの世にこの文明の利器がなかったら、彼女と出会うこともなかったでしょう。

この本、読んでみますね。ご紹介くださってありがとうございました。

(パソコン直りました^^またブログのほうで変わらぬおつきあいをいただけたら嬉しいです)
ハルさんへ 
ハルさん、こんにちは!(これを書いてるのは早朝ですが)

ハルさんがツイッターから去ってから、寂しい思いをしています。ただこうしてぼくのブログにおとずれてくださり、関係は途絶えてないんだ、とちょっと小躍りしたい気分になりました。

この本は、書店でたまたま見かけて買ったのですが、読んでて考えさせられることがたくさんありました。

ネタバレになりますが、たとえば倉本氏が塾生に「生活必需品を挙げよ」って質問を出した、って話があったんですが、そのときの答えが、1位 水 2位 火 3位 ナイフ 4位 食い物 だった。それに対して渋谷の若者に同じ質問したところ、1位が金で、2位が携帯、3位がテレビで、4位が車だったんです。

ぼく、読んでて、ヤベエって思いました。俺、渋谷の若者と同じジャン! って。

まあ、逆にいえば、「ヤバイ」って思えたからこそ、その「ヤバさ」を提供してくれたこの本を読めてよかったと思うんですけどね。

ハルさんは今、会津に住んでらして、ぼくら都会の人間(千葉は田舎ですが)に見えないものも、見えてるんでしょうね。また、東京のご出身だからこそ、田舎のよさとわるさも感じられる立場にあると思います。

そんなハルさんが、この本を読んでどんな感想を抱くか、とても楽しみです。

パソコンがなおったとのこと、うれしいかぎり。またブログにお邪魔します。

コメントありがとうございました。

 
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