ボビーに首ったけ 片岡義男
世の中がどんなにくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。
こんにちは。今週も「道下森の本棚」の時間がやってきました。
さてさて、今日ご紹介する本は、これ。

片岡義男著「ボビーに首ったけ」だ。
この短編集をぼくが読んだのは、高校2年のときだ。
以前べつの記事で書いたが、当時のぼくは波乗りに明け暮れていた。(参照→7/14 ビッグウェンズデイ デニス・アーパーク ジョン・ミリアス→http://shigerumichishita.blog86.fc2.com/blog-entry-448.html)
その当時、週末の合宿所と化していた九十九里の仲間の部屋に、この本があった。……というより片岡義男の文庫が本棚いっぱいに並んでいたのだ。
『ロンサム・カウボーイ』『スローなブギにしてくれ』『彼のオートバイ、彼女の島』『人生は野菜スープ』『マーマレードの朝』『ラジオが泣いた夜』『いい旅を、と誰もが言った』『ときには星の下で眠る』『味噌汁は朝のブルース』『最終夜行寝台』『限りなき夏 1』『夕陽に赤い帆』『彼女が風に吹かれた場合』『幸せは白いTシャツ』『ドライ・マティーニが口をきく』『メイン・テーマ』『一日じゅう空を見ていた』『缶ビールのロマンス』『B面の最初の曲』……etc.
どれもこれも、シブくてたまらないタイトルだ。
ちょうどその頃、活字だけの本に興味を持ち出していたぼくは(参照→'10 11/18スローカーブを、もう一球http://shigerumichishita.blog86.fc2.com/blog-entry-91.html)、本棚に並ぶ魅惑的なタイトルの本を、片っぱしから読んでみたいと思った。
「すげえな、おまえ。こんなの読むのかよ?」
ぼくは一冊、一冊、手に取りながら訊いた。
「まあな。けっこうおもしれえよ」
「何冊か、貸してくんねえ?」
「いいよ。持ってけよ」
「何、おめえ、そんな本読めんのかよ」
べつの仲間が、横から茶々を入れた。
「よせって。おめえじゃ無理だって。その頭じゃよ」
「うっせえな。おめえらよりはマシだべよ」
ぼくはいい返すと、本棚の中から3冊抜き取った。
『彼のオートバイ、彼女の島』、『いい旅を、と誰もが言った』、そしてもう一冊が『ボビーに首ったけ』だった。
家に帰ると、早速、借りてきた本を読んだ。『ボビーに首ったけ』だ。
『ボビーに首ったけ』は、7編ある短編のしょっぱなに収録されていた。ぼくは夢中で読んだ。サーフィンを題材にした青春小説で、ボビーと呼ばれる主人公も同年代、進路のことで父親と喧嘩して家を出るという、まさに当時の自分が置かれていた状況そっくりそのままだった。100%共感できた。
小説の中で、「ボビー」は父親ときっちりと対決し、自分の夢を勝ち取った。手段は家出だが、自分の未来に妥協しなかった。それはフィクションの世界ではあったが、少なからずぼくの人生の手本となった。ぼくも自分の夢に正直に生きようと強く誓った。いや、そうしなければいけないのだと、この本を読んで洗脳されたのだ。
『ボビーに首ったけ』に収録されている7編を読み終え、『彼のオートバイ、彼女の島』、『いい旅を、と誰もがいった』も読むと、すっかり片岡義男にハマった。その後は自分の金で片岡義男の文庫本を買った。立てつづけに10冊は読んだのではないだろうか。
自分には何だってできる、と信じていた17歳のぼくの、その限界知らずのまっさらな心に、片岡義男が描く自由な世界が深くしみこんでいった。波乗り。オートバイ。旅。アメリカをはじめとする海の向こうの国々。あれから20余年経った今も、その世界観は心の中ではっきりと生きつづけている。
正直いえば、片岡義男の書く物語は、リアリティーのない夢物語だ。今の自分の年齢で読みはじめたとしたら、おそらくはじめの3ページすら読むに耐えないだろう。
だからぼくは、この本を大人の皆さんにはすすめない。限界知らずの少年、あるいは少女だけに、この『ボビーに首ったけ』を、片岡義男の小説をすすめる。
ここでいう少年、少女とは、17歳以下をさす言葉ではない。
あなたが何歳であっても、少年少女に戻る術を知っているなら、『ボビーに首ったけ』の自由な世界観は、心に深くしみるはずだ。
今いる部屋を一歩出て、自分だけの冒険に出かけるなら、まずは古本屋にいき、片岡義男の本をさがしてみてほしい。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。
刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング
オリジナルワンな生き方 ヒュー・マクラウド
スローカーブを、もう一球 山際淳司
リッツカールトンで育まれたホスピタリティノート 高野登
船に乗れ 藤谷治
ルリユールおじさん いせひでこ
超訳ニーチェの言葉
白銀ジャック 東野圭吾
神さまはハーレーに乗って ジョン・ブレイディ
気まぐれロボット 星新一
BRUTUS 2011 2/1号
男の作法
天国はまだ遠く 瀬尾まいこ
最後の授業 アルフォンス・ドーテ
モーラとわたし おーなり由子
老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ
傷だらけの店長~それでもやらねばならない~ 伊達雅彦
Sports Graphic Number「スポーツグラフィック ナンバー」 3/24 ルーキー秘話
奇跡は路上に落ちている 軌保博光
小屋番三六五日
O型自分の説明書 Jamais Jamais
一瞬の風になれ 佐藤多佳子
バカでも年収1000万円 伊藤喜之
ユニット 佐々木譲
桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ
自分でつくる うまい海軍めし 海軍めし愛好会
スタインベック短編集
金持ち父さん 貧乏父さん ロバート・キヨサキ
ビッグウェンズデイ デニス・アーパーク ジョン・ミリアス
OZmagazin8月号
絵を描きたいあなたへ 永沢まこと
白夜行 東野圭吾
デッドエンドの思い出 よしもとばなな
獨白「北の国から」ノーツ 倉本聰
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よかったらこちらの姉妹ブログも覗いてみてください。最新話~第8話「お父さんとの最後の時間」を掲載しました。

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片岡義男著「ボビーに首ったけ」だ。
この短編集をぼくが読んだのは、高校2年のときだ。
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その当時、週末の合宿所と化していた九十九里の仲間の部屋に、この本があった。……というより片岡義男の文庫が本棚いっぱいに並んでいたのだ。
『ロンサム・カウボーイ』『スローなブギにしてくれ』『彼のオートバイ、彼女の島』『人生は野菜スープ』『マーマレードの朝』『ラジオが泣いた夜』『いい旅を、と誰もが言った』『ときには星の下で眠る』『味噌汁は朝のブルース』『最終夜行寝台』『限りなき夏 1』『夕陽に赤い帆』『彼女が風に吹かれた場合』『幸せは白いTシャツ』『ドライ・マティーニが口をきく』『メイン・テーマ』『一日じゅう空を見ていた』『缶ビールのロマンス』『B面の最初の曲』……etc.
どれもこれも、シブくてたまらないタイトルだ。
ちょうどその頃、活字だけの本に興味を持ち出していたぼくは(参照→'10 11/18スローカーブを、もう一球http://shigerumichishita.blog86.fc2.com/blog-entry-91.html)、本棚に並ぶ魅惑的なタイトルの本を、片っぱしから読んでみたいと思った。
「すげえな、おまえ。こんなの読むのかよ?」
ぼくは一冊、一冊、手に取りながら訊いた。
「まあな。けっこうおもしれえよ」
「何冊か、貸してくんねえ?」
「いいよ。持ってけよ」
「何、おめえ、そんな本読めんのかよ」
べつの仲間が、横から茶々を入れた。
「よせって。おめえじゃ無理だって。その頭じゃよ」
「うっせえな。おめえらよりはマシだべよ」
ぼくはいい返すと、本棚の中から3冊抜き取った。
『彼のオートバイ、彼女の島』、『いい旅を、と誰もが言った』、そしてもう一冊が『ボビーに首ったけ』だった。
家に帰ると、早速、借りてきた本を読んだ。『ボビーに首ったけ』だ。
『ボビーに首ったけ』は、7編ある短編のしょっぱなに収録されていた。ぼくは夢中で読んだ。サーフィンを題材にした青春小説で、ボビーと呼ばれる主人公も同年代、進路のことで父親と喧嘩して家を出るという、まさに当時の自分が置かれていた状況そっくりそのままだった。100%共感できた。
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自分には何だってできる、と信じていた17歳のぼくの、その限界知らずのまっさらな心に、片岡義男が描く自由な世界が深くしみこんでいった。波乗り。オートバイ。旅。アメリカをはじめとする海の向こうの国々。あれから20余年経った今も、その世界観は心の中ではっきりと生きつづけている。
正直いえば、片岡義男の書く物語は、リアリティーのない夢物語だ。今の自分の年齢で読みはじめたとしたら、おそらくはじめの3ページすら読むに耐えないだろう。
だからぼくは、この本を大人の皆さんにはすすめない。限界知らずの少年、あるいは少女だけに、この『ボビーに首ったけ』を、片岡義男の小説をすすめる。
ここでいう少年、少女とは、17歳以下をさす言葉ではない。
あなたが何歳であっても、少年少女に戻る術を知っているなら、『ボビーに首ったけ』の自由な世界観は、心に深くしみるはずだ。
今いる部屋を一歩出て、自分だけの冒険に出かけるなら、まずは古本屋にいき、片岡義男の本をさがしてみてほしい。
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