アフリカの光 丸山健二
世の中がどんなにくさりきってしまっても、本屋にいけば最高の友達に出逢えます。
こんにちは。ブログのスケジュール変更後はじめての「道下森の本棚」の時間です。「道下森の道具箱」とかわりばんこの隔週連載となりましたが、今後もよろしくお願いします。
さてと、じゃあいってみようか。今日ご紹介する本はこれ。
丸山健二著「アフリカの光」だ。
この本は表題作を含めて4編が収録されている短編集で、河出書房新社より1974年に刊行された。(後に角川文庫)
古い小説で、しかしながら古典文学の類ではないので、本屋にいってももちろん手に入らない。古本屋で見つけるしか手に入れるすべはない。Amazonで購入するという手もあるが、レア物と評されているのか、779円からの出品となっている。これは河出書房の単行本の価格で、角川文庫の方は、何と1048円からの出品だ。これに送料に250円かかる。
丸山健二の大ファンならじゅうぶん出せる額なんだろうけど、ちょっとなあ……とため息がもれる値段だ。
もちろんそれだけ出す価値があり、だからこそ「道下森の本棚」で紹介しようとしているのだが、それでも不景気の昨今、ビンボーのぼくには痛い値段だ。
だから図書館で借りた。
今回は借りて読んだのだが、以前は持っていた。いや、持っていた、というのは正確ではない。旅先の古本屋で購入し、旅の間に読み、読み終えると同時に捨てた。
つまらなかったから捨てたのではない。旅とは身軽であるべき行為だから、読み終えた本をずっと持っているなんてことはしないのだ。読んだら捨てるか、焚火に放って燃やすか、出逢った旅人にあげるか、いずれにしろ手元に残すことはない。手元には、常に読みかけの本だけがある。それが旅だ。
一度捨てた本だが、心にはずっと残っていた。旅の間ずっとだ。この本を買って読んだ場所が北海道で、この本の舞台が北海道の漁師町(明確な地名は書かれていないが、おそらく北海道のどこかと推測できる)なので、リアルに心にしみたのだろう。
その旅から数年経った今も、心に残っている。
だから今回、この「道下森の本棚」で紹介すべく、再読したのだ。
で、さっき読み終えた。
感想?
感想なんてない。ぼくごときが、ああだこうだと批評するには、あまりに偉大すぎる小説だから。
アフリカの光……
これは読んだ方がいい。いや、読むべきだ。読まなくてはいけない。本好きを名乗るのであれば。
たぶん、たいていの市町村の図書館に置いてあるはずだ。この記事を読んですぐに予約すれば、明日かあさってにはあなたの手元に「アフリカの光」があるだろう。その本には4編の短編が収録されているが、時間がなかったら表題作の「アフリカの光」だけ読めばいい。
短い物語だ。本を読みなれている人なら、ものの数十分で読み終わる。
読後あなたの口から、おお……と感嘆の声がもれるだろう。ぼくはもれた。いや、読んでいる間も、何度、声がもれたことか。
説明(叙述)を徹底的に省略し、会話文をいっさい使わず、また地名や人物名など固有名詞を一つも出さない、そんな贅肉のない小説だ。しかし、いや、だからこそ鮮明に、漁師町の情景が浮かんでくるのだ。主人公である「私」の心情が伝わってくるのだ。
丸山健二の筆力に感嘆し、いつしか物語に引きこまれ、そしてとまらなくなる。
そんな小説「アフリカの光」を、ぜひぜひ、秋の夜長に読んでほしい。
ちなみに「アフリカの光」は、中島丈博脚本、神代辰巳監督で映画化もされた。原作者である丸山健二はこっそりと客をよそおってその映画を観たという。その映画を、自らのエッセイで酷評していた。「これはひどい」と。
ぼくも10年ほど前にビデオで借りて観て、「ひどい」と思った。うん、関係者にはわるいけど、あれはひどかった。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よかったら、今までに紹介した「道下森の本棚」も、ぜひご覧になってください。
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最後の冒険家 石川直樹
ホームへ
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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こちらの姉妹ブログで、自作の小説を連載中です。第1話から読めますので、ぜひ覗いてみてください。

ここからどうぞ→お父さんとの旅『入り口』
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丸山健二著「アフリカの光」だ。
この本は表題作を含めて4編が収録されている短編集で、河出書房新社より1974年に刊行された。(後に角川文庫)
古い小説で、しかしながら古典文学の類ではないので、本屋にいってももちろん手に入らない。古本屋で見つけるしか手に入れるすべはない。Amazonで購入するという手もあるが、レア物と評されているのか、779円からの出品となっている。これは河出書房の単行本の価格で、角川文庫の方は、何と1048円からの出品だ。これに送料に250円かかる。
丸山健二の大ファンならじゅうぶん出せる額なんだろうけど、ちょっとなあ……とため息がもれる値段だ。
もちろんそれだけ出す価値があり、だからこそ「道下森の本棚」で紹介しようとしているのだが、それでも不景気の昨今、ビンボーのぼくには痛い値段だ。
だから図書館で借りた。
今回は借りて読んだのだが、以前は持っていた。いや、持っていた、というのは正確ではない。旅先の古本屋で購入し、旅の間に読み、読み終えると同時に捨てた。
つまらなかったから捨てたのではない。旅とは身軽であるべき行為だから、読み終えた本をずっと持っているなんてことはしないのだ。読んだら捨てるか、焚火に放って燃やすか、出逢った旅人にあげるか、いずれにしろ手元に残すことはない。手元には、常に読みかけの本だけがある。それが旅だ。
一度捨てた本だが、心にはずっと残っていた。旅の間ずっとだ。この本を買って読んだ場所が北海道で、この本の舞台が北海道の漁師町(明確な地名は書かれていないが、おそらく北海道のどこかと推測できる)なので、リアルに心にしみたのだろう。
その旅から数年経った今も、心に残っている。
だから今回、この「道下森の本棚」で紹介すべく、再読したのだ。
で、さっき読み終えた。
感想?
感想なんてない。ぼくごときが、ああだこうだと批評するには、あまりに偉大すぎる小説だから。
アフリカの光……
これは読んだ方がいい。いや、読むべきだ。読まなくてはいけない。本好きを名乗るのであれば。
たぶん、たいていの市町村の図書館に置いてあるはずだ。この記事を読んですぐに予約すれば、明日かあさってにはあなたの手元に「アフリカの光」があるだろう。その本には4編の短編が収録されているが、時間がなかったら表題作の「アフリカの光」だけ読めばいい。
短い物語だ。本を読みなれている人なら、ものの数十分で読み終わる。
読後あなたの口から、おお……と感嘆の声がもれるだろう。ぼくはもれた。いや、読んでいる間も、何度、声がもれたことか。
説明(叙述)を徹底的に省略し、会話文をいっさい使わず、また地名や人物名など固有名詞を一つも出さない、そんな贅肉のない小説だ。しかし、いや、だからこそ鮮明に、漁師町の情景が浮かんでくるのだ。主人公である「私」の心情が伝わってくるのだ。
丸山健二の筆力に感嘆し、いつしか物語に引きこまれ、そしてとまらなくなる。
そんな小説「アフリカの光」を、ぜひぜひ、秋の夜長に読んでほしい。
ちなみに「アフリカの光」は、中島丈博脚本、神代辰巳監督で映画化もされた。原作者である丸山健二はこっそりと客をよそおってその映画を観たという。その映画を、自らのエッセイで酷評していた。「これはひどい」と。
ぼくも10年ほど前にビデオで借りて観て、「ひどい」と思った。うん、関係者にはわるいけど、あれはひどかった。
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